「メンヘラ」という防御線

 

「メンヘラ」という言葉ほど便利に使われる言葉はない。

 

いとも簡単に自分の苦しさを陳腐に変容させて、他人へ吐きやすい言葉にする。その嘲笑的な印象を持つその言葉を、自分と"そうでない人"をつなぐ言葉にしてくれるんだ。

 

決して、本当の苦しさや叫びは届かない。でも、自分の苦しさを抱えきれなくなったからこんな言葉でもいいから外に吐き出させてほしいんだ。

そしてこの言葉は、「これ以上私に近づくと面倒ですよ。私言いましたからね?」という意味でもある。

 

その先には安心も、味方も、支援も存在しない。そんなの分かってる。

 

でもそうとしか伝えられない苦しさがあって、そうとしか外に出せないエゴまみれの自分がいる。

 

自分も"そっち側"で一緒に笑っていたい。でも"こっち側"の人間なんだ、ごめんね。これ以上近づくと危ないよ。少しだけ気づいてほしそうで、でも絶対にバレてはいけない秘密。

 

それが「メンヘラ」という仮面だ。

 

今日もどれだけの人がこの言葉に助けられ、この言葉に守られ、そして孤独になっていくんだろう。

 

「わたし、メンヘラだよ(笑)」

笑わないでよ。もういいから。もう笑わなくていいからちゃんと泣いてよ。一緒だから。

 

"そっち"だの、"こっち"だの、早くそんな世界終わっちゃえ。


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竹口和香