過食嘔吐で吐きだすものは何だろう。
大量の食べ物? 正解。
大量の胃液? それも正解。
でも、摂食障害の方が本当に流したいのは「吐いてしまった罪」だ。
拒食症と過食症も心は同じ
実は、表に出る症状が異なるだけで拒食症も過食症も心の中はほとんど同じ。
・体重の増減と自己価値が比例している
・他人の評価で自分の評価を測る
・痩せたら自分のことを好きになれるかも
・理想が高く、自分に厳しい
・優等生やいい子。甘え下手
・こうしなきゃダメ・・!という強迫観念
・白黒思考 などなどなど・・・
色々書いたけど、著しく自分に自信がない事や、体重や外見、食べ物への執着、異常な痩せ願望は共通してる。
なんでこの話をしたかというと、過食症の方は「痩せなきゃ」と強く思っている、自分の価値を「体重」で測ってしまっているということを伝えたかった。
過食症は自分の意思と相反する行動を(自分のコントロールできない範囲で)発作的にとってしまう。 その乖離の苦しさや自責から、他の不安症や気分障害を併発するケースも多い。
それほど、自分の中に自分が2人いる状況、そしてその乖離は苦しいもの。
過食嘔吐で自分の罪をトイレに流す
過食症の方が吐いてしまう理由として分かりやすいのが、「太るのが怖いから」という理由。これも間違いない。
でも、もう1つ。吐くことで、自分の罪をなかったことにしようとしてるのだ。
「吐いたから食べた自分を許せる」「さっきの発作はなかったことに」「これで全てリセットされた」
そう、摂食障害の発作に狂わされた自分を、そして大量の食べ物を体に詰め込んでしまった自分を、どうにかなかったことに、トイレに流し込む。そうして、体重計で測られる自分の価値を保とうとする。
でも記憶や体調に鮮明に刻まれる「吐いてしまった」という事実がまた自分を苦しめることになり、より深い、深い地獄へと誘われる。
過食症はただ、「食べたい病気」じゃない。
「食べすぎて苦しい病気」じゃない。
「食べたら吐いちゃう病気」でもない。
体型への執着が自己価値と直結する過食症、痩せたいと強く願いながらも起こる発作は真逆の過食。そしてその発作は自分の力でとめられない。
「過食嘔吐を自分の意思でとめろ」と言われても「心臓発作を自分の意思でとめろ」と言われてるようなものだ。
この理解だけでも進んだら、きっと今より少し救われる人は増える。
竹口 和香